俺も、スペインの研究を志したときに、師匠の南山大学の黒田清彦先生編著の「スペインハンドブック」という本の中に、スペイン国歌の楽譜が載っているのですが、そこに歌詞が載っていないことを先生に指摘したら、
「歌詞はありません。」
と回答をいただき、大変驚きました。その時にさらにお話をお聞きして、実は独裁者フランコ時代に歌詞があったのですが、その後国歌に歌詞をつけるという話は何度か持ちあがったものの、センスがよくないだとか何だかといろんな理由で結局延期されているのが実情のようです。
うろ覚えですが、かつて何かのスポーツ大会でスペインが表彰台に上がったときに国歌が流れるシーンがあったのですが、
そこで何と音響関係の機械が故障...。
国歌が流れない...。
アカペラで歌えば...
あれ!?
そういえば歌詞がない...。
なんていうこともあったということを聞いたことがあります。
ということで、2016年にマドリードがオリンピック招致を目指して頑張る中で、スペイン選手団にも国歌を歌ってもらって気合入れて頑張ってもらおうということで、スペインのオリンピック委員会が国歌の歌詞を募集した...ということらしいのですが...。
何だか面白いことになっているようです。
30年以上にわたり「歌詞のない国歌」だったスペイン国歌をめぐって、同国内がもめている。
発端は10日、スペイン五輪委員会(Spanish Olympic Committee)が昨年6月に招集した有識者会議が、約7000件の公募の中から新しい歌詞の案として4作品を選出したこと。昨年6月に招集されたこの会議は音楽学者、歴史学者、作詞家、弁護士、作曲家、2回の五輪優勝歴のある女子ヨット選手テレサ・ザベル(Theresa Zabell)の6人で構成されている。
当初、五輪委員会は21日にマドリード(Madrid)で歌詞案の発表式典を行い、3大テノールの1人で同国出身のプラシド・ドミンゴ(Placido Domingo)氏の歌で披露する予定だった。ところが正式発表を前に歌詞案が流出、11日の地元日刊紙ABCに掲載されたことから、論議が巻き起こった。
五輪委員会のアレハンドロ・ブランコ(Alejandro Blanco)委員長は16日、「論争の原因となり多くの批判を受けた」として、歌詞案の取り下げと発表式典の延期を発表した。歌詞を作成する方針に変更はないとしている。
■「ハミングか空を仰いで」きたスペイン代表選手たち
スペイン国歌の旋律は18世紀の軍楽曲「ロイヤル・マーチ(Royal March)」で、1770年にカルロス3世(King Carlos III)が王室の出席する行事での演奏を命じて以降、スペイン国民はこれを国歌とみなしてきた。
しかし、歌詞は専制政治を敷いた独裁者フランコ将軍(General Francisco Franco)が後に付け加えたもので、公式な歌詞とみなされたことがない上、1975年のフランコ独裁の終焉とともに再び取り払われた。
以来、スペイン国歌には歌詞はなく、国際スポーツ大会などでスペイン代表の選手たちは国歌が流れる間、ハミングをするか空を仰ぐなどしてきた。
■「古臭い」「分裂招く歌詞ないほうがまし」と批判の嵐
11日付ABC紙に掲載された歌詞案は、「スペインよ永遠なれ/われわれは皆でともに歌う/澄んだ声で/心ひとつに」と始まり、最後は「正義と偉大さ/民主主義と平和」で終わる。
この歌詞について、改造前の社会党サパテロ政権で文化相だったカルメン・カルボ(Carmen Calvo)氏は、「古臭く、ありきたりで、過去のどこかの国歌の歌詞を写したよう」だと批判、「まったく気に入らない」と切って捨てた。
左派連合会派「統一左翼(Izquierda Unida、IU)」のガスパル・リャマサレス(Gaspar Llamazares)代表も、「陳腐だ」と一蹴。「分裂を引き起こす」歌詞を付けるくらいなら、歌詞なしのままのほうがましだと述べた。
■副首相も五輪委員会での歌詞選定に消極的
マリア・テレサ・フェルナンデス・デラベガ(Maria Teresa Fernandez de la Vega)第1副首相も、11日の閣議後、「国歌というのは全国民を代表するものであり、スポーツ大会でのみ演奏されるものではない」と発言。「国内すべての行事で演奏されるのだから、もっと広く意見を募る必要がある。歌詞を付けるかどうかの議論を行い、歌詞案を承認するのにふさわしい場所は、国民主権の場である議会だと思う」と記者団に語った。
五輪委員会が歌詞案を提案した場合、公式に採択するためには50万人分の署名を集め、さらに議会の承認を受ける必要がある。
(c)AFP
歌詞なしで1992年にバルセロナでオリンピックやって大成功やったやんかぁ〜!!
と言いたくなるのは俺だけでしょうか!?
マリア・テレサ・フェルナンデス・デラベガ第1副首相が、
「国歌というのは全国民を代表するものであり、スポーツ大会でのみ演奏されるものではない」
と述べているのが、それはそうでしょう!!
しかし、当のスペイン国民はこの混乱をどう見るのだろうか?
最後に、さすがはAFP!!マリア・テレサ・フェルナンデス・デラベガ第1副首相が次に述べたことに関して、きちんと解説がなされていますね。
「国内すべての行事で演奏されるのだから、もっと広く意見を募る必要がある。歌詞を付けるかどうかの議論を行い、歌詞案を承認するのにふさわしい場所は、国民主権の場である議会だと思う」
ということに対して、
五輪委員会が歌詞案を提案した場合、公式に採択するためには50万人分の署名を集め、さらに議会の承認を受ける必要がある。
との解説が...。
スペインは、拙著「Kashiromanの新スペイン法入門講義」で述べるように、国会に対して議案を発議できる権限を持っている者についての解説をしていますが、それは国会議員だけでなく、内閣、自治州議会、それから何と一般の国民(但し、50万人以上の署名が必要)も、国会に対しての議案の発議権があるんです。
このことについては、スペイン憲法第87条に書いてあるんですね。
五輪委員会は、国会議員でも内閣総理大臣でもないので、50万人以上の承認を経た上で提出される「一般国民」の立場での提出というカテゴリーになりますが、やはり「国歌」である以上、そうした手続きは当然踏まなければならないだろうと思われます。オリンピック応援ソングの披露ではない(「ゆず」とか「スマップ」じゃないんだから!!)んだから、いくら歌えないからってみじめ(!?)な思いをしているとは言っても、もう少し冷静な議論をしてもらいたいところです。
■参考資料
スペインの国歌(PCで閲覧されている方のみ視聴可!!)






